「この設備のことは〇〇さんに聞けば分かる」
「この音が異常かどうかは、ベテランに見てもらおう」
経験豊富なベテランの判断は、現場にとって大きな力です。
問題はベテランに頼ることではなく、「何を見て、何に気づき、なぜそう判断したのか」が周囲に伝わらないまま終わることです。
その場ではベテランに聞けば解決するため、判断した結果だけが伝わり、その理由までは共有されないことがあります。
そこで現場リーダーとして確認したいのが、判断した理由が、その人の中だけに残っていないかという点です。
この記事では、「あの人しか分からない」が生まれる理由と、ベテランが「何を見て、なぜそう判断したのか」を現場で共有していくポイントを解説します。
ベテランしか分からない現場で起きていること
設備の音がいつもと違う。部品の状態が少し気になる。
そんなとき、「この人に聞こう」と特定の誰かに頼ることが当たり前になっていないでしょうか。
たとえば、設備から普段と違う音がしたとき、ベテランに確認し、その判断をもとに対応したとします。
その場では、どう対応するかが決まります。
しかし、「何を確認し、なぜそう判断したのか」まで共有されなければ、次に同じようなことが起きたときも、またベテランに判断を求めることになります。
答えだけが共有され、判断の中身が残っていない。
これが「あの人しか分からない」状態をつくる一つの原因です。
なぜ判断した理由まで共有されにくいのか
「あの人しか分からない」状態が続く背景には、ベテランに聞けばその場の仕事は進められる、という状況があります。
分からないことがあったときにベテランへ確認し、答えを聞いて対応する。そのため、「なぜそう判断したのか」まで聞く機会は少なくなりがちです。
しかし、答えだけを聞いて終わると、ベテランが何を確認し、何をもとに判断したのかは本人の中に残ったままになります。
その場の答えだけで終わらせず、判断に至るまでの考え方にも目を向けることが、個人の経験を周囲へ共有する第一歩になります。
「あの人しか分からない」は不在時に見えやすい
普段はベテランに聞けばすぐに解決するため、「あの人しか分からない」状態は問題として見えにくいことがあります。
それが見えやすくなるのが、その人が休みだったり、別の作業に入っていたりするときです。
たとえば、設備からいつもと違う音がしたものの、普段判断しているベテランが不在だったとします。
「どこを確認すればいいのか」
「何をもとに判断すればいいのか」
が周囲で分からず、ベテランへ確認したり、判断を待ったりすることがあります。
こうした場面があるなら、作業方法そのものよりも、「何を見て、何をもとに判断するか」がその人の中だけに残っているのかもしれません。
「あの人がいれば分かる」で済んでいることほど、その人がいないときに何が分からなくなるのかを見てみると、現場で共有したい経験や判断のポイントが見えてきます。
まずは「なぜそう判断したのか」を一つ聞く
ベテランの経験を共有するために、最初からすべてを言葉にしようとする必要はありません。まずは、日々の作業でベテランに判断を求める場面があったとき、答えを聞いて終わるのではなく、
「なぜそう判断したんですか?」
と一歩踏み込んで聞いてみます。
そこから、ベテランが確認していた場所や状態、過去の経験との比較など、答えだけでは見えなかった判断の中身が出てくることがあります。
ベテランが長年の経験で身につけたことを、最初からすべて言葉にするのは難しいものです。
まずは、その日に出た判断を一つ取り上げて、「なぜそう判断したのか」を聞いてみる。それなら、普段の作業の中でも始めやすく、個人の中にある経験を少しずつ周囲へ共有していくことができます。
判断理由を「次に使える形」で残していく
ベテランから判断した理由を聞いても、その場で話して終われば、時間がたつにつれて忘れられたり、聞いていなかった人には伝わらなかったりします。
そこで、繰り返し出てくる判断については、「何を確認し、どのように考えたのか」を次に使える形で残していきます。
たとえば、日々の記録に判断した理由を一言加えたり、朝礼や振り返りの中で共有したりする方法があります。
同じような判断が何度も出てくるのであれば、必要に応じて作業手順や確認方法などへ反映することも考えられます。
ベテランの経験を一度にすべて仕組みに変える必要はありません。
その日に聞いた判断理由を残し、同じような場面で使えるようにする。
こうして個人の中にあった経験を少しずつ現場に残していくことが、「あの人しか分からない」を減らすことにつながります。
まとめ
ベテランに判断が集まること自体が問題なのではありません。
注意したいのは、その判断に至った理由が周囲へ共有されず、「あの人しか分からない」状態が続くことです。
現場リーダーとして確認したいのは、「なぜそう判断したのか」まで共有されているかという点です。
まずは、ベテランに判断を求めたときに、その理由を一つ聞いてみる。そして、そこで分かった判断のポイントをその場だけで終わらせず、次に同じような場面があったときにも使える形で残していきます。
こうした小さな積み重ねによって、個人の中にあった経験を、現場で共有できる知識として少しずつ残していくことができます。
「あの人しか分からない」を減らすためには、一度共有して終わりではなく、こうした取り組みを日々の習慣として続けていくことも大切です。
現場での声かけや振り返りを無理なく続け、ゼロ災につなげるためのしくみやリーダーの工夫については、こちらの記事でも紹介しています。
▶ ゼロ災を“続ける現場”に変える!習慣化のしくみとリーダーの工夫
よくある質問(FAQ)
- ベテランに頼ること自体が悪いのでしょうか?
-
いいえ。経験豊富な人に相談すること自体は問題ではありません。大切なのは、その人がどこを見て、なぜそう判断したのかを周囲にも共有することです。
- ベテランの感覚的な判断も共有できますか?
-
経験による判断をすべて言葉にするのは難しいこともあります。まずは、その判断をするときに何を確認したのか、何をもとに考えたのかを聞き、言葉にできる部分から共有していきます。
- 忙しい現場では、どのように共有を始めればよいですか?
-
最初からすべての経験を共有しようとせず、まずはその日に出た判断を一つ取り上げて、理由まで聞くことから始めます。日々の作業の中で少しずつ積み重ねていく方法があります。
- 聞いた判断理由は、どのように残せばよいですか?
-
日々の記録に判断理由を一言加えたり、朝礼や振り返りで共有したりする方法があります。同じような判断が繰り返される場合は、必要に応じて作業手順や確認方法などへの反映も検討します。
- 「あの人しか分からない」を減らすには何から始めればいいですか?
-
まずは誰かに判断を求めたとき、答えだけで終わらせず、「なぜそう判断したのか」まで聞いてみることから始めます。そこで分かった判断のポイントを周囲で共有し、次に同じような場面でも使える形で残していきます。




