ヒヤリハットが報告されない理由|”言うと損”が残る現場の構造

ヒヤリハットが、ほとんど報告されないことはありませんか?

「事故にならなかったから大丈夫」

「自分のミスだと思われたくない」

「わざわざ報告するほどではない」

こうした考えや不安から、現場で起きた小さなヒヤリハットが、その人の中だけで終わってしまうことがあります。

報告が少ないと、

「うちの現場はヒヤリハットが少ない」

と感じるかもしれません。

しかし、本当に危険が少ないのでしょうか。

もしかすると、危険がないのではなく、危険が表に出てきていないだけかもしれません。

ヒヤリハットは、事故に至らなかったものの、次の事故を防ぐために活かせる重要な情報です。

それでも報告されないのであれば、「もっと報告するように」と呼びかけるだけではなく、なぜ現場の人が「言わない方がいい」と判断するのかを見る必要があります。

この記事では、ヒヤリハットが報告されない理由と、安心して共有できる現場にするための考え方を解説します。

目次

報告が少ないからといって、危険が少ないとは限らない

例えば、フォークリフトと作業者がすれ違った時に、

「危なかった」

と感じる場面があったとします。

しかし、接触したわけではない。

ケガをした人もいない。

そのため、

「何も起きなかったからいいか」

と、そのまま作業を続ける。

こうしたヒヤリハットが報告されなければ、管理する側からはその危険が見えません。

同じ場所で別の人が同じ経験をしていても、それぞれが報告しなければ、現場では「何も起きていない」ように見えてしまいます。

つまり、ヒヤリハットの報告件数だけでは、現場にどれだけ危険が潜んでいるかまでは判断できないということです。

報告が少ない時こそ、「危険がない」と考える前に、現場の危険が表に出てくる状態になっているかを見る必要があります。

「言うと損」と思われていないか

ヒヤリハットが報告されない理由を、作業者の責任感だけで考えるのは十分ではありません。

重要なのは、報告した後に何が起こると思われているかです。

例えば、以前ヒヤリハットを報告した時に、

「なんでそんなことをしたの?」

「ちゃんと確認していたの?」

と、報告者の行動ばかりを追及されたとします。

すると次にヒヤリとすることがあっても、

「自分が怒られるかもしれない」

「余計な仕事が増えるかもしれない」

「黙っていた方が面倒にならない」

と考えるようになるかもしれません。

これでは、報告することが本人にとって「言うと損」になってしまいます。

もちろん、危険な行動そのものを確認する必要がある場合もあります。

ただ、報告するたびに責められると感じる環境では、事故を防ぐために共有したい危険な情報ほど、表に出てきにくくなります。

ヒヤリハットが集まらない時は、

「なぜ報告しないのか」ではなく、「報告するとどうなると思われているか」

を見ることが大切です。

報告したくても、方法が分からなければ情報は集まらない

ヒヤリハットが表に出ない原因は、「怒られたくない」という気持ちだけではありません。

そもそも、どこへ、どう報告すればよいのかが曖昧になっていることもあります。

例えば、作業中にヒヤリとした時、

「班長に言えばいいのか」

「朝礼で伝えればいいのか」

「報告書を書かなければいけないのか」

といった報告方法が明確でなければ、その場では「後で伝えよう」となりがちです。

そして、別の仕事が入れば、そのまま忘れてしまうこともあります。

また、班長へ口頭で伝えて終われば、その人には伝わっていても、現場全体の情報としては残りません。

ある現場では、作業中に気づいた問題を口頭だけで終わらせず、朝のミーティングや社内の共有ツールを使って関係者へ共有しています。個人への報告で終わらせず、現場全体で確認できる情報として残しています。

つまり、報告する意識があっても、報告する入口が分かりにくければ、ヒヤリハットは途中で消えてしまうのです。

「報告してください」と呼びかけるだけではなく、

「ヒヤリとしたら、ここから報告する」

という報告の入口を、誰にでも分かるようにしておくことが重要です。

まずは「言っても大丈夫」と思える受け止め方にする

報告する入口を分かりやすくしたら、次に見直したいのが、ヒヤリハットが出てきた時の受け止め方です。

例えば朝礼などで、「昨日、危なかったことはなかった?」と聞いてみる。

ヒヤリハットが出てきたら、すぐに「誰が悪かったのか」を決めるのではなく、

「どんな状況だった?」

「どこで危ないと感じた?」

と、まず起きたことを確認します。

状況を確認した結果、危険な行動があれば必要な指導を行い、設備や作業方法に問題があれば改善につなげることも必要です。

ただし、最初から報告した人を責める形になってしまうと、次のヒヤリハットが出てこなくなるかもしれません。

大切なのは、「ヒヤリハットを出すこと」と「必要な指導をすること」を分けて考えることです。

「報告したら怒られる」ではなく、「危ないことに気づいたら、まず伝えていい」と思える受け止め方にすることが、ヒヤリハットを集める土台になります。

根本は「その場ですぐ報告できるしくみ」をつくる

「言っても大丈夫」と思える状態ができても、報告に手間がかかれば、ヒヤリハットがそのまま流れてしまうことがあります。

現場では、一つの作業が終わればすぐ次の仕事に移ることもあります。

「後で報告しよう」と思っていても、別の対応が入れば、そのまま忘れてしまうこともあるでしょう。

そこで考えたいのが、ヒヤリとした時に、その場で誰でも簡単に報告できるしくみです。

例えば当社では、30秒ほどで回答できるアンケートフォームを設置し、ヒヤリハットをその場で報告できるようにしています。運用開始から1ヶ月以内に15件以上の報告が集まり、これまで表に出にくかった現場のヒヤリハットを把握するきっかけになりました。

ただし、フォームを用意するだけで自然に集まるとは限りません。当社でも運用開始時には報告を促す声掛けを行いました。

大がかりなシステムでなくても、

・スマートフォンからその場で入力できる

・入力項目を必要最低限にする

・QRコードなどから簡単にアクセスできる

といった方法でも、報告するまでの手間を減らせます。

大切なのは、「後で報告する」ではなく、「気づいた時に報告できる状態」にすることです。

最初から完璧なしくみをつくる必要もありません。

まずは簡単な方法で始めて、実際に使われているかを見てみる。

使われなければ、「入力が面倒なのか」「入口が分かりにくいのか」などを確認して、少しずつ変えていけばよいのです。

誰でもその場で報告できる方法をまずつくり、実際に運用してみる。

それが、現場に埋もれていたヒヤリハットを表に出すための第一歩です。

まとめ

ヒヤリハットが報告されないからといって、作業者の安全意識が低いとは限りません。

見直したいのは、「安心して、迷わず、その場で報告できる状態になっているか」という点です。

「報告すると責められそう」「どこへ報告すればよいか分からない」「報告するのに手間がかかる」。

こうした状態があれば、「もっと報告してください」と呼びかけるだけでは、ヒヤリハットは集まりにくくなります。

まずは、「ヒヤリとしたら、ここから報告できる」という分かりやすい入口と、報告された情報をまず受け止める方法を見直してみてください。

では、集まったヒヤリハットを次の安全活動へつなげるには、どうすればよいのでしょうか。

その考え方については、次の記事で詳しく解説します。

フィードバックをしくみに!目的で動くゼロ災現場づくり

よくある質問(FAQ)

ヒヤリハットがほとんど報告されないのはなぜですか?

「報告すると怒られる」「自分のミスと思われる」と感じることに加え、どこへ報告すればよいか分からない、報告に手間がかかるといった理由も考えられます。

ヒヤリハットは事故にならなくても報告すべきですか?

はい。事故には至らなかったヒヤリハットも、現場に潜む危険を把握し、次の事故を防ぐための重要な情報になります。

報告件数を増やすにはどうすればよいですか?

「もっと報告してください」と呼びかけるだけでなく、報告者を最初から責めず、まず状況を確認する受け止め方と、その場ですぐ報告できる方法の両方を整える見直すことが大切です。

ヒヤリハットの報告方法はどうすればよいですか?

簡単な入力フォーム、QRコードなど、決められた担当者への報告など、現場に合った方法が考えられます。大切なのは、「ヒヤリとしたら、どこから報告するか」が誰にでも分かる状態にしておくことです。

 ヒヤリハット活動で最も大切なことは何ですか?

まずは、現場で起きているヒヤリハットを安心して報告でき、情報が表に出てくる状態をつくることです。さらに、集まった情報を共有するだけで終わらせず、改善につなげて、同じ危険を繰り返さないしくみにしていくことが大切です。

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