仕事の中で、誰かに注意したり、いつもと違う対応をしたりすることがあります。
そのとき、自分がなぜそう判断したのか、改めて考える機会はあるでしょうか。
普段は当たり前のように行っていることでも、振り返ってみると、自分が何を気にしていたのか、何を大切にしていたのかに気づくことがあります。
会社にも、経営理念や方針など、大切にしている考え方があります。会社によっては「フィロソフィ」や「行動指針」と呼ぶこともあります。
自分の経験を振り返ることで、こうした会社の考え方とのつながりが見えてくるかもしれません。
この記事では、日々の小さな出来事から自分の判断や行動を振り返り、次の仕事に生かす方法を紹介します。
日々の仕事を振り返ると、何が見えてくる?
普段の仕事では、決められたルールやこれまでの経験をもとに判断する場面があります。
例えば、いつもと違う作業方法を見かけたとき、「そのやり方は違うよ」と声を掛けることがあるかもしれません。
その場では必要だと思って対応していても、後から振り返ると、
「自分はなぜ、そのやり方が気になったのだろう」
「相手には、どんな理由があったのだろう」
と、別の疑問が浮かぶことがあります。
こうした振り返りは、自分の行動が正しかったかどうかを評価するためだけのものではありません。
自分が何を見て、何を考え、何を大切にして行動したのかを確かめる機会にもなります。
振り返るときは、次の四つを考えてみます。
① 最近、何があった?
② なぜ、その行動をした?
③ そのとき、何を大切にしていた?
④ 振り返って、次に生かせそうなことは?
最初からすべてに答えようとする必要はありません。
まずは、最近の仕事で印象に残った出来事を一つ思い出すところから始めます。
まずは日常の小さな出来事を一つ選ぶ
振り返る材料は、大きなトラブルや失敗だけではありません。
・誰かに注意したこと
・相手が困らないように、ひと言添えたこと
・いつもと違うやり方に気づいたこと
こうした日常の出来事も、振り返る材料になります。
例えば、製造現場で使う社用車が、決められた向きとは違う向きで停められていたとします。
それを見たリーダーが、「決められた向きに停めてください」と声を掛けました。
この出来事を振り返るときは、「ルールを守っていなかった」という印象だけでなく、まず何が起きて、自分がどう対応したのかを整理します。
「車が決められた向きと違っていたので、停め方を直すように伝えた」
と書き出すだけでも構いません。
まずは、何が起き、自分がどう対応したのかを確かめる。
この段階では、なぜ相手がその向きに停めたのか、自分がなぜ気になったのかまで答えを出す必要はありません。
起きたことと自分の行動を整理しておくことで、次に理由や考えを振り返る材料になります。
なぜその行動をしたのか、理由を考える
出来事を整理したら、次は相手と自分、それぞれの行動の理由を考えてみます。
例えば、車を使った人に理由を聞いたところ、
「次に出すとき、この向きの方が使いやすいと思った」
という説明があったとします。
一方、自分は決められた停め方と違うことが気になり、声を掛けていたのかもしれません。
そこで、次の二つを分けて考えます。
「相手は、なぜその行動をしたのか」
「自分は、何が気になって声を掛けたのか」
相手の理由は想像で決めつけず、確認できる場合は本人に聞いてみます。
ただし、理由があることと、ルールに沿っているかどうかは別です。停め方に決まりがあるなら、その目的も確認します。
そのとき、自分は何を大切にしていたのか
行動の理由が見えてきたら、もう一つ考えてみます。
「自分は、何を大切にしてその行動を取ったのだろう」
例えば、ルールを守ることを大切にしていたのか、安全な通行を気にしていたのか。
あるいは、決まりと違うことが気になっただけで、ルールの目的までは十分に理解していなかったかもしれません。
大切なのは、後から理由をつけるのではなく、そのとき何を考えていたのか、振り返って何に気づいたのかを整理することです。
こうした振り返りが、自分の判断や考え方を見直すきっかけになります。
ほかの人の見方から、自分の考えを見直す
一人で振り返っていると、自分が気づいたことだけで出来事を捉えている場合があります。
そんなときは、関わった人や上司などに、別の見方がないか聞いてみます。
「自分はこう考えて声を掛けたのですが、ほかに見ておくことはありましたか?」
例えば、社用車の停め方について相談したとき、
「相手が使いやすいと感じた理由だけでなく、ほかの人がその車を使うときのことも考えてみては」
という意見が出るかもしれません。
自分は決められた停め方を守ってもらうことに意識が向いていましたが、ほかの利用者にとっての使いやすさまでは考えていなかった、と気づく場合もあります。
ほかの人の見方を聞くことで、自分だけでは気づかなかった点が見つかることもあります。
ただし、ほかの人の意見をそのまま正解にする必要はありません。
実際に決められているルールやその目的を確認しながら、自分が見落としていたことはないかを考えます。
毎回、特別な話し合いの場を作る必要もありません。仕事の区切りに一言聞くところからでも始められます。
また、振り返る中でルールそのものの見直しが必要だと感じた場合は、職場で決められた手続きに沿って相談します。
振り返った経験を、次の仕事や会社の考え方につなげる
出来事や行動の理由を振り返ったら、気づいたことを次の仕事でどう生かせそうか考えてみます。
例えば、社用車の停め方について、
「自分も、なぜその向きに停める決まりなのか十分に理解していなかった」
と気づいたとします。
それなら、まずルールの目的を確認し、次に同じような場面があったときは、その理由も含めて説明するという対応が考えられます。
振り返りで気づいたことを、次の行動に少しずつ生かしていく。
その積み重ねが、自分の判断や仕事の進め方を見直すきっかけになります。
また、自分が大切にしていたことを振り返る中で、会社が大切にしている考え方との共通点に気づくこともあります。
会社の言葉が、経験を通じて意味を持つこともある
ある製造業の会社では、社長から聞いた「人は変われる」「完璧な人間はいない」という言葉が、仕事や人間関係の経験を通じて、少しずつ意味を持つようになったという社員がいます。
忙しいときに相手へ完璧を求めすぎたり、一度の失敗で判断してしまったりした経験から、「相手にも間違えることはある」と考えるようになったそうです。
会社の経営理念や方針も、聞いたときにすぐ自分の仕事と結びつくとは限りません。
しかし、日々の経験を振り返ることで、以前はピンとこなかった言葉の意味が見えてくることもあります。
すべての出来事を会社の言葉に結びつける必要はありません。
まずは、自分が何に気づき、次にどう生かせそうかを考えるところから始めてみましょう。
まとめ
日々の仕事では、何気なく判断したり、いつものやり方で対応したりすることがあります。
そんなときは、最近の出来事を一つ選び、「何があったのか」「なぜそうしたのか」「何を大切にしていたのか」「次にどう生かせそうか」を振り返ってみます。
自分の行動だけでなく、相手の理由やほかの人の見方を知ることで、新たな気づきが得られるかもしれません。
そうした経験が、会社の理念や方針を自分の仕事と結びつけて考えるきっかけにもなります。
まずは、印象に残った出来事を一つ振り返るところから始めてみてはいかがでしょうか。
また、気づいたことを朝礼などで共有すると、チームの考え方を知る機会にもなります。
次の記事では、輪読と短い意見交換を通じて、会社が大切にしている考え方をチームで共有する方法を紹介します。
▶ 信念をチームの共通言語に|輪読で“安全判断を揃える”朝礼のつくり方
よくある質問(FAQ)
- 毎日振り返る必要はありますか?
-
必ずしも毎日行う必要はありません。仕事の区切りや、気になる出来事があったときなど、自分が取り組みやすいタイミングで振り返ってみます。
まずは一つの出来事から始めてみてください。
- うまくいった仕事も振り返ってよいですか?
-
うまく進んだ仕事も振り返る材料になります。
「なぜその対応をしたのか」「何に気を配っていたのか」を考えると、自分が普段の仕事で大切にしていることに気づくかもしれません。
- 自分がうまく対応できなかった出来事でもよいですか?
-
そうした出来事からも振り返れます。
「何を見ていたのか」「十分に確認できていなかったことはなかったか」などを考えてみます。
うまく対応できた話にまとめる必要はありません。次に同じような場面があったとき、どう対応できそうかを考える材料になります。
- 会社の理念や方針と結びつかない場合はどうすればよいですか?
-
無理に結びつける必要はありません。
まずは、今回の出来事から分かったことや、次に生かせそうなことを整理します。別の経験をしたり、ほかの人の考えを聞いたりする中で、会社の考え方との接点が見つかることもあります。
- チームで振り返るとき、全員が同じ考え方になる必要はありますか?
-
まずは、それぞれが何を見て、どのように判断したのかを聞いてみます。考え方が違う理由を知ることも、振り返りの一つです。
ただし、安全や品質など、仕事で守るべきルールや判断基準については、職場で決められた内容を確認し、共通認識を持つことが大切です。




