材料を取りに行くために、工場の反対側まで歩く。
工具を使うたびに、離れた工具棚まで往復する。
検査記録を記入するためだけに、作業場所から事務所へ戻る。
このような移動が、現場で当たり前になっていないでしょうか。
一回の移動だけを見ると、数十秒から数分程度かもしれません。
しかし、同じ移動を一日に何度も繰り返せば、作業時間の中で大きな割合を占めるようになります。
ムダな移動が多いと、「作業者の動きが遅い」「もっと効率よく動いてほしい」と考えられがちです。
しかし、問題は作業者の歩き方だけにあるとは限りません。
必要な材料や工具、置場が作業場所から離れていれば、どれだけ急いで動いても移動そのものはなくなりません。
問題なのは、歩いていることではありません。
歩かなければ作業が進まない動線が、現場の当たり前になっていることです。
この記事では、工場でムダな移動がなくならない理由を、人の動きを考えた動線設計になっていない現場の構造から解説します。
ムダな移動が多いと何が起きるのか
ムダな移動が多い現場では、作業そのものよりも、材料や工具を取りに行く時間が増えています。
例えば、作業者が材料を取りに行くために、工場の反対側まで歩いていることがあります。
一回の移動だけを見ると、それほど長い距離ではないように感じるかもしれません。しかし、材料が必要になるたびに同じ場所を往復すれば、その時間は少しずつ積み重なります。
このような状態では、
・作業より移動に時間を使うようになる
・作業が何度も中断される
・ムダな歩行が積み重なり、生産性が低下する
といった影響が発生します。
問題は、作業者が歩くのを嫌がっていることではありません。
歩かなければ作業が進まない状態になっていることが、本当の問題です。
なぜ移動時間が減らないのか
移動時間が減らない理由は、人の動きを考えた配置になっていないためです。
工場では、設備の増設や作業内容の変更に合わせて、材料置場や工具棚などが少しずつ追加されることがあります。
その際、空いている場所へ設備や置場を設けることが優先され、作業者がどれだけ移動するかまでは確認されない場合があります。
例えば、梱包材置場と出荷場が離れている現場では、梱包作業を行うたびに作業者が行き来します。
この配置が長く続くと、作業者も「梱包材はあそこへ取りに行くものだ」と考えるようになります。
その結果、遠回りや往復が特別なムダとして認識されず、日常の作業として定着していきます。
また、完成品置場や台車置場が後から追加されたことで、以前より移動距離が長くなっていることもあります。
しかし、作業手順だけが見直され、人がどこを何回歩いているのかが確認されなければ、ムダな往復はそのまま残ります。
移動時間がなくならない原因は、作業者が効率よく動いていないことだけではありません。設備や置場を追加する際に、人の移動まで十分に見直されていないことにあります。
動線が見直されていない現場のサイン
人の動きを考えた動線設計になっていない現場では、ムダな移動が日常の作業として定着しやすくなります。
例えば、
・使用頻度の高い工具や材料が離れた場所にある
・同じ場所を一日に何度も往復している
・作業途中で工具や記録のために持ち場を離れている
このような状態はないでしょうか。
使用頻度の高い工具が離れた場所に保管されていると、作業者は必要になるたびに同じルートを歩くことになります。
また、工具や記録用紙を取りに行くために作業を中断したり、同じ場所を何度も往復したりしている現場もあります。
こうした移動が長年続くと、「工具はあそこにあるもの」「このくらい歩くのは当たり前」という認識が定着し、ムダな移動に気づきにくくなります。
このような状態が見られる場合は、人の動きを考えた動線や置場になっているかを見直すことが重要です。
まず確認したいのは「何のために歩いているのか」
設備や置場の位置を見ただけでは、作業者が一日にどれだけ移動しているかまでは分かりません。
そこで、実際の作業を見ながら、「何のために歩いているのか」を確認してみましょう。
例えば、完成品ができるたびに完成品置場まで運んでいる場合でも、その移動が一日に何度も発生していれば、大きな時間になります。
現場を見る際は、
・どこからどこへ移動しているのか
・何をするための移動なのか
・一日に何回繰り返しているのか
という3つの視点で確認してみてください。
大切なのは、作業者が速く歩いているかどうかではありません。
「この移動は本当に必要なのか」という視点で、繰り返されている移動を見ることです。
遠回りが当たり前になっている現場では、歩いている本人も、その移動をムダだと感じていないことがあります。
まずは、日常の作業に紛れている移動を見つけることが、改善の第一歩になります。
根本は「歩かなければ作業が進まない構造」にある
ムダな移動を減らすために重要なのは、作業者に効率よく動くことを求めるのではなく、必要な物を取りに何度も持ち場を離れなくてよい環境をつくることです。
そのためには、
・使用頻度の高い物を作業場所の近くへ配置する
・作業途中で持ち場を離れる回数を減らす
・必要な工具や材料をすぐ使える状態にする
といった工夫が有効です。
動線改善ができている現場では、作業に必要な工具をワゴンなどにまとめ、作業場所の近くで管理している例があります。
例えば、グラインダー作業で粗い砥石用と細かい砥石用の工具をそれぞれ用意しておけば、砥石を交換するたびに工具を取りに行く必要がありません。
重要なのは、実際の作業の流れに合わせて物の配置を見直し、歩かなければ作業が進まない環境そのものを変えることです。
まとめ
ムダな移動が多い現場では、作業者が非効率な動きをしているとは限りません。
多くの場合は、必要な物を取りに行く移動が日常の作業として当たり前になっており、その背景には、「材料は昔からこの場所にある」「工具はあの棚へ取りに行くもの」といった認識が定着しています。
5Sでは、人と物の動きを見直し、必要な物を必要な場所で管理することで、ムダな移動が発生しにくい環境をつくることも重要な考え方です。
現場リーダーとしてまず確認したいのは、作業者がどこを歩いているかではなく、何のために歩いているのかという視点です。
その移動が本当に必要なのかを見直すことが、作業効率の向上や作業者の負担軽減につながります。
ムダな歩行や遠回りを減らすには、設備や材料置場をどのような視点で見直せばよいのでしょうか。人と物の流れを整理する考え方や、動線改善のアイデア、現場での実例を次の記事で詳しく紹介しています。
▶ 動線を変えれば現場が変わる!安全動線の改善アイデアと実例3選
よくある質問(FAQ)
- なぜ工場でムダな移動が発生するのですか?
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材料や工具、完成品置場などが作業場所から離れており、人の移動距離を考えた配置になっていないためです。短い移動でも、何度も繰り返すことで大きなロスになります。
- 作業者が効率よく動けば改善できますか?
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作業者の動き方だけでは限界があります。必要な物が遠くにあれば、速く歩いても移動そのものはなくなりません。まずは動線設計を確認することが重要です。
- ムダな移動はどのように見つければよいですか?
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作業者の動きを短時間追い、どこからどこへ、何のために移動しているかを確認してください。同じ場所への往復や、遠くまで物を取りに行く動きが見つかることがあります。
- 大掛かりなレイアウト変更が必要ですか?
-
必ずしも必要ではありません。使用頻度の高い工具や備品を作業場所の近くへ移すなど、小さな配置変更から始めることもできます。
- 改善する移動は、どのように優先順位を決めればよいですか?
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移動距離だけでなく、1日に発生する回数も確認してください。短い移動でも、繰り返し回数が多いものから見直すと、作業効率の改善につながりやすくなります。



