安全行動が続く現場づくりには、次の3つのSTEPがあります。
① リーダーの“判断の軸”を言葉にする
② 信念をチームの共通言語にする(朝礼・輪読)
③ 理念を日々の行動としくみに結びつける
こうした取り組みを進めていても、現場では、
・最初は盛り上がったけど、3週間たつと元に戻っている
・朝礼で輪読はしているが、現場の動きはあまり変わらない
・理念も安全も大事だと分かっているが、忙しくなると後回しになる
といった声が上がります。
新しい方針書を配った初日は、みんな大きな声で輪読してくれる。 ところが3週間もすると、方針書は道具箱の下に埋もれ、朝礼のあとは“自己流”に逆戻りに。
これは「あなたの熱量や根性が足りないから」ではありません。
多くの場合、つまずいているのは“考え方”ではなく、 “しくみ”と“すり合わせ”の部分です。そこでこの記事では、「どこでつまずきやすいのか」を3つのSTEPごとに整理し、落とし穴とセルフチェックリストの形で紹介します。
安全行動が続くまでの3つのSTEPを確認する
安全行動が続いている現場では、共通して次の3つのSTEPを踏んでいます。ここであらためて整理してみましょう。
STEP1:リーダーの判断を揃える「軸」をつくる
・会社の理念を理解し
・自分の言葉に翻訳し
・現場で使える判断基準に落とし込む
ここが曖昧なままでは、どれだけしくみを作っても、現場に根づくのは“建前だけの安全”になりがちです。
▶現場リーダーの判断を揃える|“誇り”と“価値観”を言葉にして現場を動かす第一歩
STEP2:信念をチームの「共通言語」にする
・行動指針やフィロソフィ手帳をつくり
・朝礼で輪読し
・二言感想・リーダー講評で意味をすり合わせる
「読む・聞く・話す」を通して、チーム全員の判断軸を揃える段階です。
▶信念をチームの共通言語に|朝礼の輪読で生まれる一体感と行動力
STEP3:理念が現場の「当たり前の行動」になるしくみ
・業務シーン別の行動指針をつくり
・評価や面談に紐付け
・朝礼・振り返り・DX/アナログを組み合わせた“続くしくみ”を用意する
▶理念が現場の行動に変わる瞬間|安全意識を持続させるしくみのつくり方
ここまで来て初めて、「安全行動が続く現場」になっていきます。
3つの落とし穴とセルフチェックリスト
さて、ここからが本題です。あなたの現場は、この3つのどこで止まっているのか?
チェックリストで一緒に見える化していきましょう。
落とし穴①:「自分の“軸”はあるつもり」のまま動いている
最初のつまずきポイントはここです。リーダー本人は「大事にしている考えはある」と思っている。
でも、言葉としては曖昧で、チームに伝わりきっていない……。
そんな状態かどうかを、一度チェックしてみましょう。
[チェックリスト①]リーダーの“判断の軸”編
(できている:1点/どちらとも言えない・できていない:0点)
▢ 自分が大事にしている“誇り”や“価値観”を3つの言葉で言える
▢ 「なぜこの判断をするのか」を、部下に自分の言葉で説明できる
▢ 自分の考えを文章にし、社長・経営陣とすり合わせたことがある
▢ 「うちのチームはこうありたい」という一文(部門理念・合言葉)がある
▢ 方針書や行動指針が紙またはデータで目に見える形になっている
▢ ベテランの“自分ルール”よりも、「決めた方針」を優先する文化がある
▢ 判断に迷った時、「その場の感覚」ではなく方針書を開いたことがある
▢ 年に一度は方針書やチームのルールを見直す場を設けている
合計:__点/8点
【判定と次の一手】
7〜8点:合格ライン
軸はかなり言語化できています。次のチェックへ進みながら、「どこをさらに磨くか」に意識を向けてみてください。
4〜6点:要調整ゾーン
「自分の中には軸があるけれど、チームへの伝わり方はまだ途中かもしれない」という状態です。
▶「現場リーダーの安全判断を揃える|“誇り”と“価値観”を言葉にして現場を動かす第一歩」
の中でも、以下の内容を読み直してみてください。
・「自分の言葉にする」
・「経営陣とのチューニング」
0〜3点:これから土台をつくる段階
ここから整えていけば、輪読もしくみづくりもグンとやりやすくなります。まずはSTEP1の記事をじっくり読み直すところから始めてみてください。
落とし穴②:言葉は配ったが「共通言語」になっていない
次のつまずきポイントは、こんな状態です。
・「冊子は配った」「行動指針もある」
・でも、実際には誰も読んでいない・話題にも上らない
せっかく作ったものが、“飾り”で止まっていないかを確かめてみましょう。
[チェックリスト②]朝礼・輪読・共通言語編
(できている:1点/どちらとも言えない・できていない:0点)
▢ 行動指針やフィロソフィ手帳を全員が1冊ずつ持っている
▢ 朝礼で週1回以上、輪読または「一日一言のシェア」をしている
▢ 輪読のあと、1人30秒程度の“二言感想”(短く一言コメント)の時間を設けている
▢ リーダーが最後に1分程度の講評を入れている
▢ 若手・ベテラン関係なく、感想を言う場がある
▢ 輪読の内容が、その日の仕事の指示・安全ポイントに結びついている
▢ 「この前の輪読の話でさ…」と、現場の会話に登場したことがある
▢ 他部署の朝礼と比べて、自分たちの輪読スタイルを見直したことがある
合計:__点/8点
【判定と次の一手】
7〜8点:かなり出来ている
共通言語づくりは順調に進んでいます。次は、「現場での具体的な行動」や「しくみ」とのつながり方(STEP3)に目を向けてみましょう。
4〜6点:形はあるが、まだ“読むだけ”の状態
「読む」ことはできているけれど、「語る」「仕事に結びつける」部分が伸びしろかもしれません。
▶信念をチームの共通言語に|朝礼の輪読で生まれる一体感と行動力
の中でも、以下の内容を読み直してみてください。
・ 「朝礼が活気づく!輪読の進め方と工夫」
・ 「ハードルが高いなら『一日一言』のシェアから」
0〜3点:冊子がまだ“眠ったまま”の状態
せっかく作った冊子や行動指針が、十分に活かされていない段階かもしれません。
まずは完璧を目指さず、「小さく始める」ことに全振りしてみましょう。たとえば、今週中に“3分輪読+二言感想”を1回だけ試してみるだけでも十分です。
落とし穴③:一度盛り上がっただけで「しくみ」になっていない
最後のつまずきポイントは、こんな状態です。
・「やろう!」とは決めた
・でも、忙しくなると少しずつ薄れていく
ここは、気持ちではなく“しくみ”で支えるゾーンです。現場に合ったやり方になっているか、一緒に見直してみましょう。
[チェックリスト③]しくみ化・継続編
(できている:1点/どちらとも言えない・できていない:0点)
▢ 「作業前点検」「図面確認」「段取り」「顧客対応」など、業務シーン別に行動指針を文字化している
▢ 判断が揺れやすいグレーな場面(工程遅れ・在庫不足など)に対して、あらかじめ“こう動く”ルールを決めている
▢ 理念・行動指針に沿った行動が、評価や面談の項目に入っている
▢ 面談でのフィードバックを、「理念ベース」で話したことがある
▢ 朝礼の内容を写真・メモ・音声など、何らかの形で記録している
▢ 記録した内容を、翌日または翌週の振り返りで使っている
▢ 「黒板の写真1枚」「音声日報」など、現場に合った低負荷の方法を選んでいる
▢ 月に一度、「安全行動がムダやロスを減らすこと」「その結果として利益にもつながること」をメンバーと共有している
合計:__点/8点
【判定と次の一手】
7〜8点:しくみはかなり整っている
すでに“続けられる土台”はできています。今後は、チェックリストを定期的に見直しながら、質の向上・ムダの削減を進めていきましょう。
4〜6点:部分的なしくみ止まり
良い取り組みはあるものの、「点」と「点」がまだ線になりきれていない段階かもしれません。「理念 → 行動 → 記録 → 振り返り」というひとつの循環にしていくイメージを持ってみてください。
▶理念が現場の行動に変わる瞬間|安全意識を持続させるしくみのつくり方
の中でも、以下の内容を読み直してみてください。
・「明日からできる!理念を具体行動に落とす3ステップ」
・「理念を行動に落とす“しくみ化”の実例」
0〜3点:単発で終わりがちな“イベント型”の状態
一度はやったけれど、日常の中にまだ十分は組み込まれていない段階です。
たとえば、「黒板の写真を撮って共有する」「音声で一言日報を残してみる」このどちらかを、明日から1週間だけ試してみるくらいの気持ちで始めてみてください。
そこで感じた「やりやすさ/やりにくさ」こそが、あなたの現場に合った“しくみ”づくりのヒントになります。
「続かない現場」の典型パターン3つと、読むべき記事
チェックリストの結果を眺めてみると、多くの現場は、次の3つのどれかに近い形になっていることが多いです。ここでは、「うちのチームは、今どのあたりの状態に近いかな?」と、自分の現場を客観的に見るヒントとして使ってください。
パターンA:最初の3日だけ盛り上がるチーム
・朝礼で輪読を始めたが、すぐに声が小さくなる
・方針書を作ったが、棚の奥で眠っている
こんなときは…
・方針書は社長・経営陣とすり合わせた“会社公認”になっているか?
・輪読が「読むだけ」で終わっていないか?
戻って読みたい記事
▶ 現場リーダーの安全判断を揃える|“誇り”と“価値観”を言葉にして現場を動かす第一歩
▶ 信念をチームの共通言語に|輪読で“安全判断を揃える”朝礼のつくり方
パターンB:リーダーだけが頑張っている孤軍奮闘チーム
・リーダーだけが理念や安全に熱い
・ベテランは「また何か始まったな」と冷め気味/若手は「言われればやる」様子見状態
こんなときは…
・ベテラン・キーパーソンを“反対勢力”ではなく“相談相手”にできているか?
・行動指針を、現場の言葉を一緒に出し合いながら作ったか?
戻って読みたい記事のポイント
▶記事1:現場リーダーの安全判断を揃える|“誇り”と“価値観”を言葉にして現場を動かす第一歩
【現場コラム】「声の大きい人」ではなく「決めた方針」を上司にする
▶記事2:信念をチームの共通言語に|朝礼の輪読で生まれる一体感と行動力
【ワンポイント】「言葉の棚卸し」と「理念のすり合わせ」から
パターンC:安全行動はあるが、利益・評価とつながっていないチーム
・安全なやり方はしているが、正直「仕事が遅くなる」と思われている
・「やってもやらなくても給料は同じ」と感じられている
こんなときは…
・その安全行動で防げる手戻り・資材ロスが、どれくらいのムダ削減になるか伝えられているか?
・評価シートに、「理念・安全に沿った行動」の項目は入っているか?
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▶ 理念を“行動”に落とし込む!現場に根づく伝え方としくみ
※特に「評価・面談とつなげて行動を定着させる」の章
明日からの「お試しアクション」3つ
チェックリストまでやってみると、「結局どこから手をつけよう…?」となりがちです。ここでは、明日から“試しに一歩だけ”踏み出してみるための「お試しアクション」を3つ用意しました。
全部やる必要はありません。
「これなら、うちでもできそうだな」と思うものを、1つだけ選んでみてください。
アクション①:行動指針を1つ選んで「今日の使い方」を一言だけ共有する
・朝礼で、その日の行動指針を1つだけ選んで読み上げる(輪読でも、リーダーが読む形でもOKです)。
・当番の1人が「この指針を、今日は〇〇の作業でこう意識します」と一言だけ共有する。
例:「『手順を守る』が今日のテーマなので、午前中の配線作業は図面を必ず二人で確認してから始めます。」
アクション②:黒板またはホワイトボードに“今日の安全ポイント”を1行だけ書く
・朝礼や作業前に、「今日の安全ポイント」を1行だけ書く。
・終礼後、その板をスマホで撮って、グループLINEなどに写真をペタッと貼るだけ。
文字起こしや長文は不要です。
アクション③:最も信頼しているベテランに、方針書を持って相談に行く
・方針書や行動指針を1枚持って、一番信頼しているベテランに声をかけてみる
「現場の迷いを減らすために、こういう基準にしたいと思っていますが、実際の現場から見て、どう感じますか?」
・まずは“賛同をもらう”より、“意見を聞く”スタンスでOKです
安全文化は、立派なスローガンや分厚い冊子よりも、「明日の一歩」をどれだけ積み重ねられるかで決まります。
この3つのうち、「これならやれそうだな」と感じたものを、いつ、どこで、誰とやるかまでイメージしてみてください。
【ワンポイントアドバイス 「熱意」の魔法】
「熱意」は、目に見えず、数値で測れないものです。
それでも、チームの空気を一瞬で変えてしまう、不思議な力があります。リーダーであるあなたが、まだ新入社員だった頃を思い出してください。「この人のためなら、ちょっと無理してでも頑張りたい」
そう思えた上司は、どんな人でしたか?
逆に、「言っていることは正しいけれど、どうもついていきたいと思えない」
そんな上司もいたはずです。
部下に迎合するわけでもなく、かといって部下に無関心でもない。そういう「熱意」のあるリーダーに、部下は惹きつけられ、理屈抜きで協力したいという気持ちが湧き起こります。
どんなに優れたしくみを構築しても、最終的にチームを動かすのは、リーダー自身が持つ「熱意」という名の魔法です。
「安全だけは絶対に譲らない」という熱意が、現場の空気を変えていきます。
今、あなたの背中を見ている部下が必ずいます。完璧である必要はありません。
自分の信じる方向に、ぶれずに、熱意を持って進んでいきましょう。
まとめ
最後に、もう一度だけ整理します。
STEP1:リーダーの軸と言葉を整える
STEP2:朝礼・輪読で共通言語をつくる
STEP3:評価・記録・振り返りのしくみで定着させる
どこか一つでも抜けていれば、安全行動は「一時的な頑張り」で終わってしまいます。
逆に言えば、この3つを地道に揃えていけば、大きな事故や労災を防ぎ「安全に帰ってくることが当たり前の現場」は必ずつくれます。ただ、想いや理念だけでは、どうしても「慣れの盲点」や見落としているリスクが残ります。
だからこそ、外部の視点を取り入れて、自分たちでは気づきにくい危険やムダを客観的に見直してみることが重要です。
次の記事「工場の安全は“慣れ”が盲点?外部視点で気づく見落としリスクと対策」では、今回のチェックリストともつなげながら、外部の視点をどう現場改善に活かすかを紹介します。
自分たちの取り組みを大切にしつつ、“第三者の目”で安全を見直したい方は、ぜひ続けて読んでみてください。
よくある質問(FAQ)
- チェックリストはどれくらいの頻度で見直せばいいですか?
-
最初の3か月は月に一度がおすすめです。慣れてきたら、半期に一度の「安全レビュー」や年度振り返りとセットで使ってください
- チェックしてみたら点数が低くて、正直ショックです。どう受け止めればいいですか?
-
点数は「ダメ出し」ではなく、どこから手をつけるか”を決めるための地図です。低いところが分かった時点で、もう一歩前に進んでいます
- 3つのSTEPを全部やるのは大変そうですが、それでも大丈夫でしょうか?
-
一気にやる必要はなく、STEP1 → STEP2 → STEP3の順番で少しずつ整えていけば十分です。「半年〜1年かけて育てるプロジェクト」として捉えてください。
- チェックリストは現場メンバーにも配って、一緒に点数をつけた方がいいですか?
-
まずはリーダー層だけで採点し、どこを整えるかを話し合う使い方から始めるのがおすすめです。現場に共有する際は、点数よりも「これから取り組むこと」と「なぜ安全のためにやるのか」をシンプルに伝えましょう。
- うちは小さな会社で、人も時間も限られています。それでもこのチェックリストは使えますか?
-
もちろん使えます。すべてに取り組む必要はなく、STEP1の1〜2項目+お試しアクションを1つだけ選ぶくらいの“ミニマム版”でも十分効果があります。
- ベテランから「また新しいことか」と冷めた反応が出そうで不安です
-
まずは「賛同を求める」のではなく、「現場の意見を聞く」ことから始めてください。
お試しアクション③のように、「現場から見てどうか?」と相談する形にすると、反発勢力ではなく“味方の助言者”になってもらいやすくなります


