リスクアセスメントは、安全管理の基本中の基本。
それでも現場では、「毎月やっているけれど、実際に何が変わったのか?」と感じる方も多いはずです。
大切なのは、リスクアセスメントを“書類の提出”で終わらせず、現場を動かすしくみとして使うこと。
あんしんファクトリーLABOでは、実際の製造現場で見えてきた視点や工夫をもとに、
すぐに活かせる実践のヒントを紹介します。
「形だけで終わっていないか?」― リスクアセスメントの落とし穴
リスクアセスメントを行っていても、形式的な実施にとどまると事故防止にはつながりません。よくあるのが、「毎月提出が目的になっている」「チェックリストを埋めただけで終わる」といったケースです。
例えば、危険源の洗い出しが“過去の事例のコピー”になっていたり、評価点をつけたあとに「対策が実施されたか」を追わないままになっていませんか?これでは、現場の行動や意識に変化は起きません。リスクアセスメントの目的は、危険を減らす行動を生み出すこと。
形式的な実施から抜け出すには、点検や評価の後に「なぜ危険なのか」「どう変えるか」を必ず話し合う時間をつくることが第一歩ですチェックすることが目的ではなく、気づきを行動につなげる“対話の場”にすることが鍵です。
“使える”リスクアセスメントに変える評価のコツ
リスクアセスメントを“使える”ものにするには、危険の裏側まで掘り下げる視点が欠かせません。表面的に「危険がある・なし」で終わらせると、対策が形だけになってしまうためです。
たとえば、「足元が滑りやすい」という指摘があったとします。
このとき、原因を「油の飛散」と特定できれば、対策は「定期清掃」だけでなく、「作業手順に拭き取りを加える」「マットを設置する」など、より具体的な行動に落とし込めます。
同じく「手が挟まれる危険」がある場合も、原因を「急な操作」「合図の不統一」と掘り下げることで、「声かけルールの明確化」や「手順書の見直し」に発展できます。
“なぜ危険なのか”を問い続けること。
それが、リスクアセスメントを机上の作業から実践的な改善活動に変える最大のポイントです
●熟練作業者ほど文字化するのが得意ではない
現場の叩き上げの熟練作業者ほど、リスクアセスメントにおいて危険箇所や対応方法を言語化することが難しい場合があります。
そういった熟練作業者は、頭の中で予知したり、危険な瞬間の対応はピカイチですが、文字に書いたり、その危険予知を他人に文章で共有する経験が少ないことが多いです。
その場合は、現場をまとめる立場の人が聞き役になり、ヒアリングで引き出す工夫をすると効果的です。
ベテラン現場で見逃されやすい3つのリスク
ベテランの経験は大きな力ですが、「慣れ」や「油断」が事故のもとになることもあります。
注意したい3つのリスクを紹介します。
1. 手順の省略
「いつも通りで大丈夫」と、指差呼称や確認を省くケースです。
繰り返し作業ほど確認を省略しがちですが、事故の多くは“慣れた場面”で起きています。
工程を省略した結果、製作物が納品時に逆方向になっていたというケースでは標準化されていない手戻りが発生し、さらにヒューマンエラーや事故につながりやすくなります。
2. 設備の経年劣化
古い設備を「今まで通り」に使い続けることで、摩耗や性能低下による危険を見落とすことがあります。同じ作業でも、設備の状態が変わればリスクも変化することを意識することが大切です。
3. コミュニケーション不足
「言わなくても分かる」「見れば分かる」という暗黙の了解が、誤解や確認漏れを招きます。新人や外注作業員が加わる現場では、小さな声掛け・確認をして特に注意しておくことが必要です。“いつも通り”を疑う視点を持つことが、安全文化を変える大きな力になります。
続けられるリスクアセスメントのしくみと工夫
リスクアセスメントを一時的な取り組みで終わらせないためには、「しくみ化」と「小さな習慣」が重要です。いきなり大掛かりな制度にする必要はありません。日常業務の中で自然に続けられるようにすれば良いのです。
続けやすいしくみの例
・朝礼で1分間「今日のリスク」を共有する
👉今日の作業での注意点を共有するだけでも、意識が変わります。
・前回のリスクアセスメントの改善点を週1で振り返る
・ヒヤリハット報告を“責める場”ではなく“学ぶ場”にする
・改善事例を掲示板で共有し、成功体験を見える化する
こうしたしくみがあると、参加のハードルが下がり、「やらされ感」ではなく「自分たちの活動」へと変わります。継続のコツは、“特別なことをしない”こと。安全を日常業務の中に溶け込ませることが、長続きの秘訣です。
“事故ゼロ”へ、現場が変わる!取り組み事例
リスクアセスメントを「やらされる活動」ではなく、現場が自ら安全をつくる時間に変えていくことができれば、結果は大きく変わります。実際に、取り組みを続ける中で“安全の意識”が自然と根づいてきた現場もあります。
事例:ある製造現場での取り組み
ある製造現場では、作業前に現場監督と作業者が一緒にリスクアセスメントを行っています。その日の工事で起こりそうなリスクを洗い出し、事前に対策を話し合うことで、注意点を全員で共有しています。
結果として、作業のスムーズさと安全性が大きく高まりました。
【実際のプログラム(修繕工事の場合)】
①作業工程ごとにリスクを洗い出す
例:高所作業による落下、閉所での頭上・足元注意、高温による熱中症など。
②発生の可能性とリスクの程度の重さを評価(ランク付け)
例:発生の可能性(低・中・高)/程度(微・中・重)
③起こさないための対処法を確認
例:「高所からの落下」に対し、「安全帯を着用」する
④対処後の残るリスクを再評価し、最小化を確認
例:安全帯着用により、落下の可能性が「中→低」になることを確認
このプロセスを通じて、管理者と作業者が共通認識を持つことが何より重要です。
現場での「知らなかった」「すれ違い」を防ぎ、安全な作業につながります。
最初は『また仕事が増える』という声もありましたが、続けるうちに『昨日の気づきで助かった』という前向きな声が聞かれるようになりました。いまでは「自分たちで守る」「声をかけ合う」意識が根づき、チームの一体感もいっそう強くなりました。
リスクアセスメントは、単なる評価作業ではなく、現場の安全を自分たちでつくる力を育てるしくみです。
まとめ
リスクアセスメントの目的は、「評価」ではなく「行動を変えること」。
形だけの点検から抜け出し、危険の本質を掘り下げ、日常に安全を組み込むことができれば、現場は確実に変わります。
小さく始めて、続けて、基本を押さえる。その積み重ねが、“事故ゼロ”につながる確かな道です。さらに、見つけた危険を“減らし続ける”には、習慣として続ける力が欠かせません。
次の記事では、「ゼロ災を一時的な取り組みで終わらせず、現場で安全を“続けるしくみ”に変えるためのコツ」を紹介します。
よくある質問(FAQ)
- リスクアセスメントはどのくらいの頻度で見直すべき?
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目安は月1回。特に作業内容の変更や設備の更新時には必ず見直しを行いましょう。
- 小規模現場でもリスクアセスメントは必要?
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はい。規模に関係なく、危険を“見える化”するしくみとしてとても有効です。小さな現場ほど、個々の判断に頼りがちなので、共有のしくみが事故防止に役立ちます。
- ベテランが「今さら」と感じてしまう場合は?
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「確認のためではなく、共有のためにやる」と伝えると協力を得やすくなります。ベテランの経験を“気づきの共有”として活かす視点が大切です。
- 書類作成が目的化してしまうときの対処法は?
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評価のあとは必ず「行動にどうつなげるか」を話し合いましょう。チェックリストを終わりにせず、次の一歩を決めることが本来の目的です。
- 継続のモチベーションを保つには?
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成果を“数値”ではなく“声”で共有するのが効果的です。
「〇〇さんの気づきで助かった」といった感謝の声を伝えることで、自然と前向きに続けられます。



